裁判官忌避申し立て書Ⅰ
裁判官忌避申し立て書Ⅱ
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4 三宅意見書には、これに続けて、3頁下段で、
「ディジタル記録された画像では標本化数が少なく、量子化レベル数が少ない場合にはそれらの痕跡が明確に認められる(参考文献(3)、(4)参照)。現在では、入出力における標本化アパーチュア(アナログ画像である銀塩フィルムに記録された写真をディジタル処理するために標本化が必要である) の口径は、0.01x0.01mm以下で行われることが多い。画像出力を行うためには、銀塩印画紙やネガフィルム、ポジフィルムに記録する場合とインクジェットプリンター、トナーを用いる電子写真方式のプリンターが開発されている。インクジェットプリンターやトナーを用いるプリンターでは階調再現を行うため、ディジタルハーフトーンと呼ばれる手法を用いることが行われる。このため、高倍率の顕微鏡を用いてそのドット構造を比較的容易に観測できる(鑑定書参照)。しかしながら、銀塩フィルムに記録する方式では、一つのピクセルが階調再現可能であるためディジタルハーフトーンの手法は不要である。それ故、一つのドットの痕跡を観測することはインクジェットプリンターのようには容易でない。」
との説明がされている。
ここでは、画像処理したデジタル画像を直接銀塩フィルムに記録した場合には、インクジェットプリンターに記録した場合(そしてそれをフィルムに撮した場合)に比べて、顕微鏡撮影などによって拡大撮影しても、ドットを観測することが困難であることについて説明されているのである。
ただ、「ディジタル処理するために標本化が必要」とか、「ピクセルが階調再現可能である」とか、「ディジタルハーフトーンの手法」というのは高度な専門的概念であって、かみ砕いた説明を補足してもらわないと、素人には理解しがたい。
三宅意見書は、この箇所で、ドットが観測されにくい方法で画像処理を施した2次ネガフィルムを作成することができる、とのきわめて重要な説明をしているのである。これを前提とすれば、科警研の意見書の、「ドット構造を確認できなかったことから論理的に言えるのは、複製の事実を確認することはできなかった、ということだけである。」との指摘は誤っているということになる。
裁判所が真摯に事実を見極めようとするのであれば、この部分について三宅氏に対する証人尋問を行って、説明を求めるのは当然である。
5 前項の三宅意見書の論述部分は、本件事故現場撮影当時高知県警察が有していたシステムを使えば、ドット構造を明確には確認できない方法で2次ネガフィルムや写真プリントを作成することができたことを専門的・科学的に証明するものであり、これ自体は画像に処理がされたこと、すなわち画像の変造ないしねつ造の事実を証明するものではない。
しかし、上述したように三宅鑑定書では、画像処理のなされている数カ所について指摘していた。三宅意見書では、さらに、これらの点について科警研意見書の疑問の提起を踏まえて、専門的で詳細な見解を明らかにしている。
たとえば、連続するタイヤ痕の画像(平成23年(押)第7号符合4、写真番号11、同12)の色調が大きく異なっている点につき、
「図22をヒストグラム変換して得られた画像(図23)の色再現およびRGB ヒストグラムが図21と大きく異なっていると指摘されているが、ここではこのようなディジタル処理で色変換が容易にできることを示したもので完全に同一の色再現はなされていない.ヒストグラム変換は、目的に沿ったヒストグラムを持つように画像を変換し色補正を行う手法である(参考文献2参照).出力デバイスの色域(gamut)内であれば任意の色再現を持つように色変換を行うことが出来る.画像処理の専門家であれば図21、22の画像はディジタル処理により色変換を行ったと考えるのは常識である.」(意見書2頁 2項)
として、デジタル処理による色変換を行ったものと断定的な判断をしているのである。
このような画像処理(ねつ造)の疑われる箇所について、三宅鑑定書や同意見書で数カ所にわたって指摘しているのであるが、たとえば上記の点一つとっても、開示されたネガフィルムが画像処理の施された2次ネガであることを証明するものであり、それはすなわち確定判決の有罪の根拠となったスリップ痕の存在を否定するものであり、三宅鑑定書、同意見書が、いわゆる「新証拠」に該当するものであることの大きな根拠となるものであるから、十分に検討されなければならない。上記専門的概念である「ヒストグラム変換」、「ディジタル処理により色変換を行った」の意味につき、証人尋問によって明らかにされる必要があるのである。
また、三宅鑑定書で指摘された画像の合成を伺わせる下半身のない人物(鑑定書10頁7項)の問題などについて、科警研意見書は何ら言及するところがない(現場でのタイヤ痕やガウジ痕のねつ造についても同様)のであり、三宅意見書では細かいミスの訂正に併せて、改めてこの点を指摘している(意見書5頁上段)。下半身のない人物の写った画像が存在することなど、素人でも画像合成を疑わざるを得ないのであるが、きわめて重要な問題であって、専門家に画像合成の手法・根拠などを十分に明らかにしていただく必要性が大きいものであることに異論はないであろう。
以上
以下 裁判官忌避申し立て書Ⅳに続く